オーダースーツの服地『強撚糸』とは何なのか?

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オーダースーツの生地の説明の中で『強撚糸』または『2PLY』『3PLY』『4PLY』『6PLY』などという言葉を幾度か耳にしたことがあるかと思います。

様々な生地メーカーから作られている、この『強撚糸』と言われる服地とはいったい何なのか?

今回はこの『強撚糸』簡単について少しご説明したいと思います。

Vitale Barberis Canonico “4PLY”

強撚糸とは

「糸に撚り(より)をかける」と書いて『撚糸』と言い、撚りの強度を高めた素材が『強撚糸』です。

そもそも「撚りをかける」とは糸をねじり合わせることを意味しており、普段着用している繊維製品の糸は基本的にねじりあって強度を保っています。

繊維製品の生地が『強撚糸』かどうかは、撚り数の単位(T/m)で決まります。

具体的には、糸1mあたり何回転したかどうか、という数字で表されます。

<撚り数の単位と分類>

・甘撚糸  500T/m以下(1インチ間の撚り回数が18回以下のもの)

・中撚糸  500~1000T/m(1インチ間の撚り回数が18~21回程度のもの)

・強撚糸  1000~2500T/m(張り腰をもたせ、シャリ感を付けるために撚り回数を多くしたもの)

・極強撚糸 2500T/m以上(強撚よりも更に撚り回数を多くしたもの)

強撚糸の特徴

撚りが強ければ強いほど繊維は強度を増し、撚りの強い糸で作られた製品は吸湿性と速乾性に優れているため、夏用のスーツに多いシャリ感(清涼感)を与えます。

それだけでなく、強撚糸の繊維は丈夫なので毛羽立ちが少なく肌との接触が軽減されるので肌ざわりが非常によくサラサラになります。

一方で、甘撚~中撚といった撚りの弱い糸は強度が弱くなりやすく、ソフトで柔らかい肌触りになる為、起毛素材やニット製品によく使われます。

甘撚、中撚生地はゴワゴワせずにふんわりと柔らかくなるのが特徴的です。

Ermenegildo Zegna “TRAVELLER”

撚糸について

普段私たちが使っている様々な繊維製品に撚糸は多く使われています。

身の周りにある繊維製品、例えば、今、我々が着ている衣類や、窓に掛かっているカーテン、テーブルクロス、ふとんやシーツ、タオルなど、家の中にあるものだけでも、数えあげればキリがありません。

家の外にも、クルマに乗ればカーシート、エアバッグなど、レジャーならテント、ハングライダー、ウインドサーフィン、雨傘にも繊維製品(撚糸)が使用されています。

そもそも、なぜ撚糸を使う必要があるのか、という根本的な部分を次に解説いたします。

糸を撚る意味

繊維製品を作る場合、糸を輸入して仕入れるか、原糸工場で製造を行います。

この段階は繊維製品を作る第一工程に該当しており、次の工程である糸の加工(撚糸業)にて撚りをかけます。

第一工程で仕入れた糸は、細くてバラバラなので、束にしなければ繊維製品に使うことはできません。

つまり、1本だけでは不足している強度を複数本で撚りをかけて束にするというのが本来の目的です。

その過程で、色々な撚り方で強度や肌触りが異なることがわかり、加工技術の進歩とともに新たな撚糸方法が生まれています。

糸を撚る主な目的

糸を撚る主な目的としては以下のことが考えられます。

①一定の太さ(均一性)を与える。

②弾力性及び伸縮性を与えられる。

③丸味を与えられる。

④光沢を与えられる。

⑤強さ(強度)を与えられる。

Vitale Barberis Canonico “21micron.”

撚り方の種類

撚糸は撚りの方向によって分類されることもあります。

この場合は右撚(S撚)と左撚(Z撚)の2つに分けられ、織物表面の光沢や摩擦係数に影響します。

また、撚り(回転)数の多い強撚糸は『クレープ織り』と呼ばれ、美しく体のラインが出るようなドレープ感や落ち感を出す際によく使われます。

「シボ」と呼ばれる糸の細かい屈曲も出やすく、手触りもかなりドライなので、布自体にコシが出るのも特徴的です。

撚糸全てに共通して言えるのは、糸が太ければ太いほど効果が大きくなるという点です。

同じ撚り数でも、細い糸と太い糸では効果が大きく違ってきます。

ウールの強撚糸は夏用スーツに最適

ウールの強撚糸は吸湿性と放湿性に優れているため、夏用スーツの素材によく使われます。

さらに強撚糸であれば細い糸を使えるため、薄手の生地を織るのに向いています。

ウールの強撚糸は高い通気性を確保できる点と、ドレープ感(生地が軽く揺れるさま)が出ることで体のラインにフィットして見栄えがいいという点でもメリットが生まれます。

注意点として、強撚糸で作られた生地は撚り縮みが起きているため、水洗いやスチームアイロンを行うと収縮してしまいます。

夏用衣類でも水洗いができないのがデメリットであり、ドライクリーニングのみとなっています。

まとめ

オーダースーツの服地として『強撚糸』はこれまで春夏に特化したイメージでしたが、近年では様々なタイプの新しい生地も開発され冬場も含め年間を通して活用のできる生地が多くつくられるようになってきました。

とにかく色々なシーンで着用頻度が高く、シワも入らず強度も欲しいという贅沢な方にとっては当にうってつけの生地ではないかと思います。

<広島えびすテーラー>では『強撚糸』を使った生地を店頭にて豊富に取り揃えておりますので、オーダーの際は生地の触感や風合いなど、実際に手に触れ、存分にご体感いただけます。

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