オーダースーツの英国クラシック回帰とは

投稿日:スタッフブログ

最近、スーツ業界では雑誌やメディアにおいて「英国調」や「クラシック回帰」というタイトルの記事をよく目にします。

オーダースーツでもイタリアンクラシコスタイルや、ブリティッシュスタイルといった種類自体は以前からありましたが、確かに最近、英国調をイメージさせる生地やディティールでのご注文が増えてきています。

「英国調(ブリティッシュスタイル)」が見直され、「クラシック回帰」と言われているのはどういった理由からでしょうか。

オーダースーツのクラシック回帰とは?

そもそも、クラシック回帰とは何でしょうか。

どの時代でもファッションやヘアスタイルに流行りがあるのと同じように、スーツにもその時代によって流行の移り変わりがあります。この”回帰”というのは、長い時間をかけてまた基本に戻るということです。スーツにおけるこの「クラシック回帰」とは、イギリスを基本としたヨーロッパの伝統的(トラディショナル)なスーツのスタイルに戻ることを言います。

これまでの流行は着丈がやや短かく、肩やウエスト回りがタイトめで体のラインを強調させるシルエットの、いわゆる”イタリアっぽい”モダンな着こなしが長い間主流でした。しかし「クラシック回帰」の流れでは構築的でカッチリとした肩回り、胸板を強調させる重厚感のあるデザインなどで、流行のスタイルやサイズ感がブリティッシュライクなものへと移行しつつあるようです。

スーツの母国の伝統を守りつつも、トレンドや現代的な要素をバランスよく織り交ぜ、スタイリッシュなシルエットに見せているのが現在のオーダースーツのトレンドになっています。

イギリスのクラシックなオーダースーツスタイル

現代のスーツの原型が誕生したのは今から約200年前のイギリスといわれています。そこからイタリアやアメリカへと渡り発展していきます。

それぞれの時代に合わせて流行があり、形は細かく変化していきますが、現代においてもそのディテールに大きな変化はないのです。

細かく変化する中でも変わらないトラディショナルな英国スーツの主な要素として、いくつかの要素があげられます。

パッドで肩を強調し、カッチリとした印象に。

日本ではバブルの時代に、広めの肩幅に分厚い肩パッドでオーバーサイズのジャケットが主流であったせいか、古臭いといった印象をお持ちの方も多いのですが、当時流行ったシルエットとは違い、英国スーツのスタンダードなシルエットは構築的でかっちりとし、堂々とした印象を与えます。

スリーピーススーツ

まず、ジャケットとスーツに、同じ生地のベストを加えたスリーピースのスタイルがクラシックな英国スタイルといえるでしょう。
襟付きやダブルブレストも英国のトラッドな要素があって重厚感や堅実さが増すので、ビジネスシーンにピッタリです。

プリーツ入りのパンツ

日本では「タック」と呼ばれる「プリーツ」入りのパンツはより英国のクラシックな要素があります。

タックと聞くと、お尻周りが大きく全体的にゆったりとした年配の方向けのパンツをイメージされる方もおられるかと思いますが、流行のプリーツはデザイン性を重視し、やや浅い折り込みで、実用性というよりは英国調のエレガントな雰囲気を加えるデザインです。

近年では、オーダースーツ、既製品スーツともノータックが圧倒的に流行っていましたが、最近は、おしゃれを楽しむ若い方の中でプリーツ入りのパンツをオーダーされる方も増えてきました。腰やヒップ回りはややゆとりがありながらもテーパード(膝の辺りから裾に向けて絞っていくすっきりとしたシルエット)がトレンドです。

やや長めの着丈

これまではイタリア人の着こなしに多い短めの丈のものが主流でしたが、お尻が隠れるくらいの長めの丈が英国のクラシックな着こなしです。

スラント(ハッキング)ポケット、チェンジポケット

この”スラント”とは、傾斜や斜めという意味で、ジャケットの腰ポケットが斜めについているデザインのものをいいます。これは、乗馬の際に前傾姿勢であるためポケットの中のものが落ちないようにできた利便性の高いデザインで、オーダースーツを作る際の代表的なデザインとして今も人気です。

腰回りをよりシャープな印象にすることができるこのデザインも英国の伝統的な要素といえます。

ブレイシズ

ブレイシズ(ブレイシーズ)とは、いわゆるサスペンダーのことです。ベルトの代わりにパンツを吊り下げるもので本来の実用性に加え、ファッション性や英国調でクラシカルな雰囲気を出すためのアクセントの意味合いが大きいようです。

チェック柄

チェック柄も英国的な着こなしの一つで、”ウィンドウペーン”と呼ばれる大きな格子柄や”グレンチェック”等は英国で長年愛されている代表的な柄です。

ダブルの裾

一般的には3.5センチ~4センチの幅がスタンダードとされています。

アメリカ発祥のグッドイヤーウェルテッド製法のシューズの重厚感に折り返しのついたダブルの裾のすることでバランスを良く見せることができます。

オーダースーツでよく使われるイギリスの生地の特徴

古くから毛織物産業が盛んだったイギリスには現在も多くの生地メーカーがあります。

気温が低く湿気も多いイギリスでは、しっかりした厚手な生地でないと撚れやすいという点から、耐久性を重視して”ハリ”や”コシ”のある、打ち込みのしっかりとした厚めの生地が多いです。

イギリスの生地は、経(タテ)糸と緯(ヨコ)糸共に2本の糸を撚って一本の糸にした「双糸」で織り上げられる生地が一般的で、耐久性に優れています。よって若干の硬さがあり、やや重たい印象を与えます。

これらの要素が英国らしい重厚感のある構築的でカッチリとした仕立てになるわけです。

また、シワになりにくく、復元力にも優れています。

対象的にイタリアの生地は経(タテ)糸と緯(ヨコ)糸に「双糸」ではなく「単糸」を用いることが多く、軽くて柔らかい光沢のある滑らかな肌触りのものが多くあります。こういった特徴からイギリスの生地は頑丈な生地が多くあるといえます。

また、イギリスの生地は一般的にクラシックで控え目な色や柄が多いですが、最近では個性的なも多く、英国調のグレンチェックにアクセントの効いた色を加え、現代風にアレンジした生地も多くあります。

その多くの生地メーカーの中でも代表的な生地をご紹介していきましょう。

生地メーカー別の特徴

Harrisons of Edinburgh (ハリソンズ・オブ・エジンバラ)

1863年、後のエジンバラ市長となるサー・ジョージ・ハリソンによって創業され、世界中のテーラーで取り扱われているイギリス国内最大マーチャントです。トレードマークは赤いバンチブック。長年多くのプロから高い支持を受けているこちらの生地メーカーは、英国生地らしいしっかりとした打ち込みでありながら、しなやかなのが特徴で、上質な生地で仕立てたスーツは、30年以上は着用できるといわれています。

”フロンティア”
サヴィル・ロウでも定番の生地で、平織りで300グラムとやや重量のあるオールシーズン着用できるハリソンズ・オブ・エジンバラの代表的な生地です。

”ファインクラシック”
秋冬の中でもやや重めで、クラシックな色柄が多く上品な光沢があり、ビジネスシーンにおススメです。

”クリュ・クラッセ”
super120’sの上質な原毛を99%使用し、残りの1%をカシミアを用いて織られた保温性の高いこちらの生地はこれからの寒い冬にピッタリな生地です。

”ムーン・ビーム”
良質な柔らかいラムの毛と、2種類の希少な毛から織り上げられるこのジャケット専用生地は、この冬、オンオフ問わずどんなシーンにおいても活躍することでしょう。

John Foster (ジョン・フォスター)

1819年ウエストヨークシャー州ブラッドフォード郊外クイーンズベリーで創業。

柔らかいイタリアの生地よりはコシがありながら、昔ながらの英国生地の特徴でもある固い生地というよりはややしなやかで、バランスのいい生地です。
クラシックで硬派な色柄でありながら柔らかさも取り入れたい方にお勧めです。

Alfred Brown (アルフレッド・ブラウン)

1915年ウエストヨークシャーで創業。

英国生地らしいしっかりとした打ち込みでありながら、高級感のある光沢も兼ね備えたオールシーズン着用できる生地が多いのが特徴です。

また、2010年にはサッカーW杯の、2016年のリオ・オリンピックの英国チームユニフォームとしてアルフレッドブラウン社の生地が採用されていることから歴史のある生地メーカーだということが伺えますね。

Savile Clifford (サヴィル・クリフォード)

1899年創業 ミスター・ジョン サヴィルとミスター・ウィリアムによってウエストヨークシャー州ハダスフィールドにて設立されました。

現在では高級生地商社で世界的にも有名なスキャバル社の傘下になっていますが、英国らしい定番の色柄をはじめ、目を引く独創的で斬新なデザインのものも常に生産し続けています。伝統を守りながらも、トレンドをうまく取り入れ若者にも厚い支持を受ける生地メーカーです。

イタリアの生地のようなツヤや滑らかさは無く、ハリやコシの強い生地で、super100’sのウールで240g/mのオールシーズンお使いいただける生地を多く取り揃えています。

Harris Tweed (ハリス・ツイード)

イギリスが世界に誇る”ハリス・ツイード”ですが、もともとはスコットランドの片田舎に長年伝わる伝統的な生地メーカーで、シャネルやイヴサンローランなどの高級有名ブランドへの生地の供給もする由緒ある生地メーカーです。

”紡毛糸”と呼ばれる羊の太く短い毛を用いるため、ツヤはなく表面は荒っぽいのですが、その分空気を多く含みことができ、防寒性が高く秋冬にピッタリな生地といえます。また、耐久性にも優れているのでコートやジャケット用の生地としてとても人気です。

まとめ

既製品だとまだタイト目なシルエットやツヤっぽいものが多い中、華やかさとはまた違った英国のクラシックなテイストを加えることで、より誠実で落ち着いた印象になります。

ツヤは抑えめで控え目な色柄のものが多いですが、英国ならではの”ハリ”や”コシ”のある生地で仕立てたオーダースーツは他には無い素晴らしい仕立て映えで、フォーマルやビジネスシーンにおいてピッタリなスタイルといえます。

この”クラシック回帰”を機に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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